だが、小学校の英語教育の必須化に踏み切るのは、今なお、いくつもの問題点が解決できていないでいるのが現状だ。その理由のひとつは、充分な数の指導者を確保できないでいること。もうひとつは授業時間の配分に対して納得していない関係者が多いことだ。
たとえば、特区として英語科の設置が認められている東京都荒川区や札幌市中央区を例にとれば、現在、全学年で年間40時間以上を英語にあてている。だからといって、英語で増えた授業時間を単純に上乗せするわけにもいかず、他の教科の時間を減らすのは、それはそれで問題がある。授業時間の問題は、ゆとり教育の見直しなど、教育の根本的な関係もあるので、引き続き、協議を繰り返す必要がある。
一方の指導者不足の方も、いまなお根本的な解決には至っていないのが現状だ。現在、小学校ではほとんどの場合、一人の教員がすべての教科を担当している。英語教育を本格的に導入するならば小学校教員の要件の一つに「英語教育ができる」ことを加えるか、あるいは音楽や体育のように単科の教員を増強するか、議論はさまざまに分かれている。
一時期は「外国人指導者による授業」と強くこだわっていたこともあったが、結論からいえばこの案は流れてしまった。経済不況と東日本大震災の影響を受けて、国の予算は年々削減されていくだろう。そうした中で、どうしてもそれだけの予算を確保できなかったし、外国人であれば誰でもいいというわけではない。人材の質の確保を考えると、外国人指導者の確保の方が、はるかに難しいという課題がある。
また、義務教育の場である小学校、少なくても公立小学校間に、教育レベルのギャップがあってはならないのだ。教育の機会均等、同レベルの教育を子どもたちが等しく受けられることは絶対に保障されなければならない憲法の問題があるのだ。
また、小学校英語の導入にあたっては、現在義務教育の一環として必須とされている。中学校の英語とのつながり、つまり、どこまでを小学校で教え、どこから中学校で教えるか。その連携はどのようにして図っていくかということも大きな課題になっている。
現在、全国の小学校の数は国公立、私立、公立を合わせて約2万校、生徒数は700万人。指導者をどう配置するかにもよるが、必要とされる英語教育指導者は大まかに10万人が見込まれているのは確かだ。
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